歯医者で使うゴムマスク「ラバーダム」とは?
寒波が迫ってきておりますが、皆さん体調には気を付けてください。
歯科医師の佐藤です。
今回は、ラバーダムについて書きたいと思います。
歯科医院で高頻度に行われている根管治療(根の治療)ですが、
その際に当院ではほぼ全ての症例においてラバーダムを使用しています。
他の歯科治療でも使うこともあります。
「ラバーダム」とは、四角いゴム状のシートです。
このラバーダムをクランプを使用して、
歯だけが見えるようにして掛けて使います。
では、なぜラバーダムを使うのでしょうか?
吉田らによる日本顕微鏡歯科学会会員に対して行った調査では、
歯科医師はラバーダムを根管治療の時に最も使用しています。
その次にレジン築造、レジン充填という順に、使用率が高いです。
(参考文献:Y.Wada-yoshida, M.Suzuki, H.Uemura et al. The Questionnaire for use of Rubber Dam to the member of Japan Association of Microscopic Dentistry. Int J Microdent 2018, 9:86-91.)
使用率が高い根管治療では、治療中に根管内に消毒液を使いますので、
治療時の安全確保や粘膜保護の観点からラバーダムの果たす役割は大きいです。
また、唾液等からの感染防止や術野も明瞭化になるため、
我々術者がより正確な治療を行うためにも有効なツールだと考えます。
少しでも治療の成功率を上げるためにもラバーダムは有用なため、
当院では使用して根管治療に当たっています。
レジン充填(プラスチックを詰める治療)では、
環境湿度が高い条件下では、接着強さが低下する傾向が認められ、
接着試験後の破壊形式は、環境湿度が高くなるに従い、界面破壊例が増加する傾向を示すという報告があります。
(参考文献:陸田明智、千葉康史、坪田圭司ら. 環境湿度条件がシングルステップシステムの象牙質接着強さに及ぼす影響. 日歯保存誌 49(4)510〜515, 2006)
湿度が高いとレジンと歯との接着力が低下します。
そのため、当院ではダイレクトボンディング治療をする際にも必ずラバーダムをします。
ラバーダムを使う利点としては、
・唾液や歯肉溝浸出液、出血による術野の湿潤・感染防止・乾燥
・切削片や壊死物質、機械・器具等の誤飲・誤嚥防止
・薬液の漏出による口腔粘膜の傷害防止
・切削器具による口腔難組織の傷害防止
・術野の明視と操作性の容易化・術式の合理化
・嘔吐反射を助長しない
・開口の補助
・患者さんの治療への不安感排除
・患者と術者の疲労緩和
・歯肉の排除
(参照:漏洩ゼロをめざすラバーダム防湿パーフェクトテクニック 辻本真規 著(2020)インターアクション株式会社)
など様々ありますが、歯科治療に必要と歯科医師が判断すれば
どの治療においても使用をしております。
そのラバーダムはどのくらい歯科医師が使用されているかというと、
根管処置におけるラバーダムの使用率についてですが、
少し古い文献になりますが、アメリカにおける一般開業医と歯内療法専門医では、
標準仕様の割合が一般:59%と専門医:92%であり、
(参考文献:Witten BH, Gradiner DL, Jeansonne BG, Lemon RR. Current trends in endodontic treatment : report of a national survey. J Am Dent Assoc 1996, 127 : 1333-1341. より引用)
ラバーダムの使用率はアメリカでも一般開業医は低いです。
近年、日本では大学の教育や現在のこのような状況もあり、
ラバーダム使用が増えてきました。
当院ではこのような状況以前から、
歯を「残す」ための治療に、ラバーダムを当たり前に使用するということを歯科医師の共通認識としております。
そのため、根管治療ではほぼ全てのケースで使用しておりますが、必要であれば他の歯科治療でも使用します。
治療の成功率を上げる、患者さんの負担を減らすという意味で当院はこれらも変わらず使用していきますし、
このような発信を患者さんに届けるように今後もしていきます。
そして、これからも当院では常に進歩した歯科治療を提供できるように
それぞれの歯科医師が研鑽して精進していきます。
歯科治療でわからないことがありましたら、いつでも担当医に聞いていただけたら幸いです。